激甚災害とリスクファイナンス

はじめに

日本では地震をはじめとして津波・暴風・豪雨・洪水・噴火などの多くの自然災害が発生しています。近年でも北海道胆振支庁地震・熊本地震・鳥取県中部地震・そして岩手県・北海道・茨城県・広島県を含めた西日本豪雨など地震と水害で多くの方が命を落としています。さらに数年前になりますが御嶽山の噴火で登山者の多くの方が犠牲となりました。

日本は治安・経済面では比較的世界の中でも恵まれている方ですがこと自然災害に関しては多くの影響を受けています。さらに今後も南海トラフ地震や首都直下地震では過去30年間で70%以上の確率で発生が予想されています。マグニチュード8.5クラスの大地震が首都圏から東海・関西・南海地方を襲う可能性が高いということも分かっています。

自然災害の場合はまず人命を優先するというのが日本国のスタイルです。それが当然であることは間違いありません。ただ同時に企業などの経済面の整備も行う必要があります。せっかく命が助かっても企業活動がない限りは生活をすることはできません。このようなところからも企業活動の迅速な回復というのも大命題といえます。

事業継続計画の策定

東日本大震災では想定をはるかに超える災害が発生しました。今後も大きな災害が発生することも予想されています。これからは災害は起こらないという考えを改めて災害が起こっても被害を最小限度に食い止めるという考えが大事になりそうです。また企業の経営者にとっては自然災害が起こっても事業継続計画の策定を行うことが重要になります。

事業者にとっての防災対策としては災害リスクを管理するリスクマネジメントという考えから事業継続計画の策定や施設の耐震化によってリスク自体を減らすリスクコントロールという方向で進んでいます。保険枠の拡大や金融部門の資金調達の確保などによってリスクの移転もしくは適切に共有をしていくことで経営への影響を図るリスクファイナンスという方法が採られます。ただリスクファイナンスはまだ日本ではあまり進んでいる状況とはいえません。

この面では学識経験者・実務者・関係府省庁など一体となってリスクファイナンスの現状と課題の整理を行っていくなどの取組の方向性を示していくことが重要となっています。リスクコントロールもとても大事なことのですが、リスクファイナンスへの耐性を高めていくことも重要になります。

リスクファイナンスの位置づけ

リスクファイナンスというものを普及させるためにはまずは事業経営における自然災害のリスク対策の位置づけについて考えていきます。大地震のような経営を揺るがすような突発的なリスクが最も危険ではないかという指摘は企業の経営者の多くの方そして学者などの学識経験者などの方の共通した意見となっています。

またそれだけでなく取引先企業の倒産や情報システムの停止そして海外及び国内で起こるテロそして感染症なども企業にとってのリスクとなってくることもあります。企業のリスクは自然災害だけという考えを持つことは早計です。

ただ大規模災害に対するリスクファイナンスに対する投資を大きく行うことは単年度で考えていく財務諸表において必ずしも投資に関する明確なリターンを期待できるという訳でもありません。予算もあって先進的な大企業でもない限りはこのリスクファイナンスというところに投資をしにくいという面もあります。この面で企業にすべてのリスクを負わせることは難しいのかなという気がします。原則はそれでも企業がこの面でのカバーをすることが大事といえます。ただ政府などの国も一体となってこのリスクファイナンスというところに力を注いでほしいという考えがあります。

企業を取り巻くリスク

企業が取り巻くリスクとして経営者の想定しているものをランキング化していきます。

1:地震や台風などのなどの自然災害:大企業98.3%・中堅企業93.8%・中小零細企業91.8%
2:外部委託先のサーバーやシステムの停止:大企業66.8%・中堅企業47.1%・中小零細企業41.5%
3、インターネットや電話などの通信手段の途絶:大企業62.0%・中堅企業41.5%・中小零細企業48.5%
4、新型インフルエンザなどの感染症:大企業70.6%・中堅企業52.5%・中小零細企業43.7%
5、失火などの内的要因による火災や爆発:大企業58.4%・中堅企業38.4%・中小零細企業45.2%
6、取引先企業の倒産や事業の中断:大企業58.4%・中堅企業42.4%・中小零細企業38.2%
7、物流などによる商品の欠品:大企業39.7%・中堅企業22.7%・中小零細企業18.1%
8、経営不振などでの経営者の失踪:大企業25.9%・中堅企業16.9%・中小零細企業18.9%
9、大気汚染・土壌・海洋汚染などの環境リスク:大企業28.1%・中堅企業12.0%・中小零細企業14.6%
10、国内外のテロ:大企業33.4%・中堅企業11.4%・中小零細企業14.6%

その中でも地震などの自然災害をリスクというのを最も多くの企業が答えています。その他では外部のサーバーやシステムの停止やインターネットなどの途絶などの通信手段の不振と答える企業も多くなっています。新型インフルエンザなどを警戒している企業も多くなっています。また工場などでは危険物を扱っているところも多いので火災や爆発などと答える理由も分かります。あとは商品の欠品や経営者の失踪などという答えています。

企業にとってのリスクファイナンス

企業の自然災害リスクへの備えの手法としては施設の耐震化や違う地域に拠点を作るなどの整備そして事業継続計画の策定などのリスクコントロールの取組が促進されてきています。リスクコントロールは実際にリスクを減らすという目的になっています。ただリスクファイナンスというのはリスクを時間的・空間的に移転すること、さらに金融を円滑に機能させることによって災害によって会社や地域が受ける被害を最小限に食い止めるなどのもしくは早期に回復させるなどのものとなっています。

また事業者がリスクファイナンスの活用を検討することによって、これまで効率が悪いと思って避けていた災害リスクを受け入れて投資を行っていくことなどが期待されます。リスクファイナンスの普及促進にするには事業者がリスクをだいたいの数値としてとらえることに重点を置くことが大事になってきます。その上で手段として必要とされるリスクファイナンスをどのように行っていくかなどの課題の整理を行うことが重要となってきます。

リスクファイナンスを検討するということは自然災害による物的損害や事業中断といった厳しい条件下における広義の事業継続計画の策定や管理会計的な発想を経て自社のビジネスモデルや強みを確認することにもつながることが期待されています。

また経済成長の減速と金融緩和によって多額の現預金を保有する企業も見受けられてきました。預金の保有は自然災害による物的損害や事業中断による財務基盤を緩和するという面ではプラスに働きます。企業価値の向上のためには成長投資のために預金を振り向けることが不可欠といえます。このリスクファイナンスを検討することはの企業にとってのリスクを把握することができます。リスクの移転手法を組み合わせることで適切な現預金水準等を見直して成長投資を促すことにつながっていきます。

自然災害リスクへの備えを単なるコストという考えで持つのではなく、企業の競争力や信用の向上そして地域経済の活性化にもつながっていくものと企業経営者が理解することも重要な要素といえます。

グローバルな視点でのリスクファイナンス

国連防災世界会議ではリスクファイナンスというものは最近は世界規模で考えていく必要があるということで一致しました。近年は自然災害リスクへの認識は高まっていきますので災害損失の拡大ということを考えていくと企業・投資家・公的機関・市民団体などの様々な組織の参画を得て自然災害リスクへの対応を促していくことが重要となります。例えばリスクを意識した投資などが重要になります。またその取組を評価する環境を作り出すことも必要不可欠といえます。そこから環境を形成するためにもリスクファイナンスへの取組が重要となってきます。

リスクファイナンスというものを企業だけでなく国・行政・市民団体などの様々な団体を巻き込むことそして日本だけでなく欧米などの世界的な視点で考えていくことも重要になってきます。地震保険の加入や国内でも保険会社の保険会社ともいえる再保険会社の設立なども重要になってきます。

地震保険は簡単に加入できない

ただ地震保険には簡単に入ることができません。家計地震保険は再保険制度というものがあって国が引き受け元になってくれるのですが、法人の地震保険にはそれが適用されません。

ということもあって地震保険は大企業などの一部の企業しか入ることができません。優良中小企業なども含めて大半の企業は入ることができないんです。

また地震保険は営業などができなくなって逸失利益が発生してしまう場合などの間接損害には適用されません。さらに工場などの倒壊などの直接費用などに対しても契約時の保険金額の5%から10%程度しか保険金が受け取ることができないことが多いです。たとえば契約時に10億円補償の地震保険を契約しても実際は5000万円から1億円程度しか手元に戻ってこない可能性が高いということです。これでは地震保険に加入するメリットがあまりありません。

地震保険に加入したいけどできなかった
同じ地域に会社があるので地震で一発で企業が飛んでしまうかもしれない
企業自体は儲かっているけど地震が一番の不安

などの方は一度相談いただきたいと考えています。

参考資料

我が国経済の災害リスクマネジメント力向上に向けて:http://www.bousai.go.jp/kaigirep/gekijin/index.html?fbclid=IwAR0fG-b4TqKxp2x-ueTQRMQGEDFG2VfjqIEpFNCt6_RwI_PaX0EmcY7OgIs