東日本大震災の保険金の支払

どれくらいの保険金が支払われたか?

東日本大震災に関する保険金の支払いがおよそ3.1兆円でした。全体のうち損害保険が2兆9000億円ほどで生命保険は2000億円ほどでした。その内訳を以下で示していきます。

損害保険の2兆9000億円のうち家計の地震保険が1兆2000億円、企業向けの地震保険が6000億円、建物などの共済が1兆1000億円ほどでした。

ただ損害額全体は少なく見積もっても17兆円程度と言われています。全体の15%程度しか保険で賄われていないということが分かってきました。残りの85%は自らの力で補填をしていく必要が出てきました。ただ14兆円というのはあまりにも大きい額といえます。首都圏などの都心部ではなく比較的人口の少ない三陸や常磐地域でこのような損害が起きてしまうと本当に致命的な損害になってきます。

そのための資金は基本的に金融機関や政府機関からの借り入れが中心となってきます。この資金調達が上手くいかないと持ち家を立て直すことができずに借家住まいが長くなってしまいます。都会の方と違ってこの地域の方は持ち家に住むというのが当然の文化になっていますのでこの面でもストレスが出てきます。また企業の場合は倒産や事業の縮小を余儀なくされます。雇用の面でもおよそ12万人の方が失業という形に追い込まれました。

企業向けの地震保険6000億円は企業の経済被害5億4000万円以上のおおよそ1割ほどでその中の直接経済被害額2兆7000億円以上から比較しても2割に届いたかどうかです。これらからいかに生活や事業の再建が厳しいものであったかは容易に推知できます。

間接損害はほとんど補償されない

この企業の被った損害に対する保険金の支払いは大半が工場や倉庫そして生産設備などに発生した直接損害に及ぶものでした。それに対して操業が中断してしまったことによって本来なら得られたはずの利益である間接損害に対しては極めて限定的にしか補償がされなかったことです。

企業向けの火災保険は火災による直接被害とは別に逸失利益に対する利益保険があります。地震保険についても逸失利益に対する利益保険があります。ただ財物への直接被害に対する保険の加入があまりなかった状況で利益保険に加入した方はほとんどいませんでした。そこから保険の支払いも限定的になってしまいました。

利益保険は保険の対象となっている建物や生産設備が被災したことによる事業の中断が支払いの要件となってきます。よって取引先が被災したがために原材料の購入ができなくなって事業の中断を行う場合の逸失利益をカバーするために構外利益保険というものを置いています。ただ日本企業は一部を除いて構外利益保険に加入している方はほとんどいません。

日本企業は間接被害に対してはほとんど無防備でした。また日本企業の自然災害に対する保険の付保状況は直接被害に対してでも不十分といえます。ましてや間接被害に対してはさらに手薄になってきます。 東日本大震災の間接損害に対しては統計がありませんが、直接被害と間接被害を合わせた経済被害の総額に対しての地震保険金の支払は15%にも届いていないということはいうまでもありません。一方GMやフォードなどの多くの世界的な企業は構外利益保険というものをすごく重視していたので損害の大部分を補っていました。この点で日本企業との違いが大きく出てしまいました。危機意識・問題意識と改善方法という面で大きな差が出ました。