損害保険会社と再保険市場のバランス

はじめに

巨大地震などの災害への認識が甘いのは個人も企業もそうなのですが、損害保険会社もまたそのような傾向があります。いろんな事情があってそうなっているのですがこの辺りをもう少し改善していかないと今後大きな地震や災害が来た時に事業が立ちいかなくなったりしてしまう可能性が高くなってしまいます。

家計地震保険は最低限の生活をするためのものとして住家の確保というものは重要になりますので信用供与を行っています。一方企業の利益などによる企業地震保険には信用供与をしていません。損害保険会社だけでは企業の大損害を填補することは難しいので思ったように企業向け地震保険の加入状況が良くないという問題もあります。

それを改善するためには資本を増強することもしくは再保険を購入するかのいずれかの方法があります。この2つの方法について検討をしていきたいと考えています。

資本を増強する

資本増強の代表的なものとしてはM&Aによって資本規模を拡大していく方法と増資があります。増資は金融市場の状況が良くてかつ追加資本に対する配当が確保できるという見込みを立てられなければ投資家や金融市場のサポートを得ることができません。また資本に対する配当は地震保険や洪水に対する保険などの特定の保険商品の引受では捻出できません。火災保険をはじめとした他の保険商品を伸ばして全体的に引受規模を拡大して収支基盤を拡充していくことになります。

また保険会計では保険会社が将来の支払責任に対して準備金を積み立てる制度を有しています。自然災害に対しては異常危険準備金によって収支期間を長期にしていく制度があります。積み立てる金額は保険種目ごとに正味収入保険料の一定率に定められています。また取り崩しについても定められたルールの下で行うことになっています。ただ一度大きく取り崩してしまうと取り崩す前の水準に比べて数年から数十年ほどかかります。異常危険の準備金の積立額を前提に長期的にかつ安定的に保険提供を考えるには問題があります。

したがって資本力の強化とそれによって財務基盤の強化は損害保険会社として可能な限り対応していく課題となっています。自然災害リスクの大幅に引受責任拡大という特定の目的に対応していく手段としては限界があると言わざるを得ない状況といえます。

再保険に過度に依存しない理由

再保険の購入は保険会社の引受責任の一部または全部を第3者に移転することによって収支期間の超長期性問題を軽減して損害の巨額性に対して大きなキャパシティーを調達できる方法であります。自然災害の保険の引受を拡大していく上ではよりよい方法であるといえます。

世界の再保険市場のキャパシティーは総額2000億ドルあります。これは日本の市場が購入している再保険のキャパシティーの8倍ほどあります。再保険会社も事業リスクを一定の水準をコントロールしていく必要があります。また自然災害の再保険のみならずそれ以外の再保険の引受も行ってポートフォリオのバランスを考えていく必要があります。

一番の問題は国際再保険市場と日本の損害保険会社の間に大きな食い違いがあります。ただそこに折り合いをつけて現在の再保険市場のキャパシティーを何とか確保している状況です。ただそれ以外の再保険市場が抱える不安要素を甘受する必要があります。国際再保険市場は日本以外の巨大自然災害や金融危機そして為替などの影響を受けて価格水準やキャパシティーが大きく変動するということです。

また2011年の東日本大震災とタイ洪水という2つの災害によって巨額の再保険の回収があったことで2012年の地震再保険の料率は大幅に上昇しました。再保険の料率は数年で数倍に上げ下げがあります。ただ日本の損害保険会社はそこまで保険料を上げ下げをすることはできません。

よって日本の損害保険会社にとってはお客様から保険料をあまり取れないのに海外の再保険に対して高い料率を払わなければならないというリスクを背負うことになります。そうなるとなかなか損害保険会社も知りごんでしまうfというところがあります。結局その問題を解決できないということがこの企業の地震保険の加入が進まないというところにも大きな原因があるということです。

地震保険は簡単に加入できない

地震保険には簡単に入ることができません。家計地震保険は再保険制度というものがあって国が引き受け元になってくれるのですが、法人の地震保険にはそれが適用されません。

ということもあって地震保険は大企業などの一部の企業しか入ることができません。ほとんどの企業は入ることができないんです。

また地震保険は営業などができなくなって逸失利益が発生してしまう場合などの間接損害には適用されません。さらに工場などの倒壊などの直接費用などに対しても契約時の保険金額の5%から10%程度しか保険金が受け取ることができないことが多いです。たとえば契約時に10億円補償の地震保険を契約しても実際は5000万円から1億円程度しか手元に戻ってこない可能性が高いということです。これでは地震保険に加入するメリットがあまりありません。

  • 地震保険に加入したいけどできなかった
  • 同じ地域に会社があるので地震で一発で企業が飛んでしまうかもしれない
  • 企業自体は儲かっているけど地震が一番の不安

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