地震災害と中小企業への支援策

はじめに

日本は大きな地震がよく来ています。平成5年の北海道南西沖地震、平成7年の阪神大震災、平成16年の新潟県中越地震、平成19年の能登半島地震、平成23年の東日本大震災、平成28年の熊本地震と福島県沖地震、平成30年の大阪北部地震と胆振東部地震など多くあります。特に阪神大震災と東日本大震災では壊滅的な被害を出すほどの大きな人的及び経済的被害を受けました。

次に最近起こった地震と被害そして小規模事業者への政府への支援内容を紹介していきます。政府も企業に最低限度の支援はしているということが分かりました。

地震の被害と小規模企業への支援

平成16年の新潟県中越地震では観光業などを中心に大きな被害を受けました。新潟県中越地震では商業よりも鉱工業部門での大きな数字の落ち込みがありました。そこで政府は被災企業に対して事業協同組合等の施設の災害復旧事業に対する補助支援、小規模企業共済災害時貸付の適用、小規模企業者などの設備導入資金の貸付金の償還期間等の延長、政府系金融機関に対する債務の返済条件緩和などの対応を行いました。

平成19年の能登半島地震では石川県・富山県というあまり地震の起きない地域で大きな被害が出ました。能登半島地震では地域が狭かったこともあって商業的なダメージは最小限で済みました。そこで政府は被災企業に対して小規模企業共済災害時貸付の適用、小規模企業者などの設備導入資金の貸付金の償還期間等の延長、政府系金融機関に対する債務の返済条件緩和などの対応、災害復旧貸付及び当該貸付の金利引下げなどの対応を行いました。

平成23年の東日本大震災ではマグニチュード・広い範囲の揺れの大きな地震など日本の東半分で大きな被害を受けました。特に宮城・福島・岩手の沿岸部では津波や原発で壊滅的な被害になりました。企業の経済被害も16兆円以上と阪神大震災の10兆円を大きく上回る被害が出ました。さらに福島県では原子力の風評被害が出て商業面でも大きな損害が出ました。そこで政府は中小企業グループ施設等復旧整備補助金、事業協同組合の施設の災害復旧に対する補助金、商店街災害復旧事業への補助金、 仮設工場や仮設店舗などの整備事業への補助金、 地域商業活性化を通じた被災地支援事業への補助金、中小企業の地域産品販路開拓等支援事業への補助金、被災企業に対して事業協同組合等の施設の災害復旧事業に対する補助支援、小規模企業共済災害時貸付の適用、小規模企業者などの設備導入資金の貸付金の償還期間等の延長、政府系金融機関に対する債務の返済条件緩和などの対応を行いました。

平成28年の熊本地震では震源付近で震度7の大地震が発生して死者も200名を超えました。余震も頻度や揺れの大きさで東日本大震災を上回るレベルのかなり厳しい状況になりました。経済被害も4兆円弱と直下型の狭い地震にしては大きな被害が出ました。熊本地震では熊本と大分両県で商業的な面での大きな落ち込みがありました。 そこで政府は中小企業等グループ施設等復旧整備のための補助金、商店街震災復旧等事業への補助金、小規模事業者のための補助金、災害復旧貸付金及び当該貸付の金利引下げ、小規模企業共済災害時貸付、地域経済活性化支援機構を活用した二重ローン対策などの対応を行いました。

災害と中小企業支援をどうしていくか

中小企業や小規模事業者は自然災害における経済被害をまともに受けてしまいます。大きな地震などは工場や店舗などの事業に欠かせない施設に直接的に深刻な被害が出てしまいます。また広い範囲で多くの企業が同時に被害受けてしまいます。また中小企業や新規企業は認知度が低いことや情報が不足することもあってより深刻な状態となります。

災害時においては中小企業がより深刻な形で現れてきます。地震などの自然災害時ではより手厚い集中的な支援を実施することが望まれます。さらに売上げの低迷や後継者がいないなどの問題も出てきます。事業継続が困難となりつつあった企業の場合は自然災害で被災したことによってその状況が一気に顕在化して廃業や倒産の危機に直面するといった状況も想定されます。また資源分配の考えからも被災した中小企業支援を行うことはかなり厳しい状況におかれてしまう企業が多くなることが予想されます。

中小企業特に地場産業・商店街・サプライチェーンのネットワークなど一 定の外部経済効果を有する集積等を形成する多数の事業者が被害を受けてしまうことで回復が困難になってしまうことがあります。または長期にわたって影響が残るといった問題が出てきてしまいます。その損害の規模や地域性を考えて経済政策のあり方を検討していくことが重要となります。極めて大規模な災害により、サプライチェーンに大きな影響が生じ、我が国経済全体に深 刻な影響を生じる場合においては、積極的な対策を講じることも必要になる

中小企業を支援する施策としては政策金融や信用保証などの中小企業を対象とする経営基盤の整備、情報提供や経営相談などの成長する意欲のある企業に対しての経営支援、創業や技術商品開発そして海外進出などを考えている企業に対しての補助金などが考えられます。ただ中小企業といっても企業の数が膨大になってしまうので特に補助金を出せる企業となると選択肢が限られてきます。ただ金融面では政府系金融機関や別枠の信用保証などの面で支援できることが多いのではないかと考えています。

被災中小企業に対しての国と地方の関係について

平時においては政府は中小企業に対しての間接補助金支援は一切行いません。ただ災害時特に激甚災害時では被災地は壊滅的な打撃を受けてしまいます。そこで国による財政措置が出動することもあります。国だけでなく都道府県それぞれで独自の支援を行っていることが多いです。その例として東日本大震災や熊本地震ではグループ補助金が交付されました。このような地震では被害が広範囲でかつ甚大であることが多くなります。そこからサプライチェーンなどが機能しなくなることによって日本経済が停滞する恐れが生じることを踏まえた特別な措置といえます。

今後比較的規模の大きな災害を考えていくと商店街や地域における複数の企業が被害を受けるケースも考えられます。これらの被害に対する直接的な復旧支援としては支援の公共性の及ぶ範囲が地域レベルにとどまるものであるのかもしくは全国規模に及ぶものであるのかの違いによっても国と地方公共団体の役割をどうしていくのかという問題も出てきます。前者であれば地方で足りますし後者であれば国の支援も必要になってくることが多くなります。

また災害規模の大きい被災になると地方公共団体自体の支援機能が著しく低下することが多くなります。このような場合は被災状況に応じて国が地方公共団体を支援することを求められるケースもあります。一例としては地域の生活基盤である商業機能復旧のために国が仮設店舗等を設置するなどのケースが出てきます。

被災中小企業支援に係る国と地方公共団体の関係については上記のような役割分担になっています。ただ災害が発生した場合に速やかな対応をするにはまだ制度的に大きな課題が残っていますので今後も引き続き検討していく必要がありそうです。また成長力のある中小企業が被災によって厳しい経営環境に置かれてしまって本来であれば生み出されるものであった優れた価値が損なわれてしまうということも出てきます。そうなると日本にとっても大きな損失となってきます。こうした観点から一般的な中小企業政策として実施される補助金等の支援措置に関して地震などの自然災害で影響を受けた地域の中小企業を優先して採択することについては一定の意義があるのではないかと考えています。

被災中小企業への支援のあり方

地震などの大規模な自然災害は突発的に来ることが多いです。そして多数の企業が一気に被害を受けてしまうことが多くなります。中小企業の経営者は事業や従業員は生活の基盤を奪われるということもあるのでダブルパンチのような状況になります。そこで復旧や復興に向けて政府や地方公共団体などの支援が必要となってきます。中小企業に対して何より大切なことは災害発生後に速やかに必要な支援策を打ち出すことそして相談や支援の体制を整えて被災した中小企業に寄り添うことといえます。

ただ取引先企業の倒産などで大きなトラブルに見舞われた企業の場合も不景気で経営の厳しくなった中小企業と同様に中小企業支援のための金融や取引あっせん等の支援を活用しながら克服していくのと似たような状況といえます。被災した中小企業においても基本的には自助努力による復旧や復興を側面から支援していくことが基本的な姿といえます。

地震などの自然災害が中小企業に影響を及ぼす場合には経営力の格差が一時に顕在化していきます。経営改善が遅れてしまって売上げなどが低迷している企業ほど災害への対応はしにくくなります。災害への備えは事業継続計画などの具体的な準備も重要といえます。ただそれよりも平時からの経営力の強化を図ることが何より重要ではないかと考えられます。

基本的には中小企業の場合も自然災害に対しても自助努力で乗り切ることが原則といえます。その自助努力に取り組む企業が事前の備えを行うことによって企業にとってのメリットがあるような支援を行っていくことが必要であるといえます。自分で苦境を乗り切ろうとする企業を優先的に支援をしていくという考えは個人的には共感できます。

また被災した企業の金融対策としては企業地震保険に加入するという方法もあります。ただ地震保険に加入することはかなりハードルが高くなっています。こういうところからも企業地震保険は現状では有効な策とはいえません。

地震保険は簡単に加入できない

地震保険には簡単に入ることができません。家計地震保険は再保険制度というものがあって国が引き受け元になってくれるのですが、法人の地震保険にはそれが適用されません。

ということもあって地震保険は大企業などの一部の企業しか入ることができません。ほとんどの企業は入ることができないんです。

また地震保険は営業などができなくなって逸失利益が発生してしまう場合などの間接損害には適用されません。さらに工場などの倒壊などの直接費用などに対しても契約時の保険金額の5%から10%程度しか保険金が受け取ることができないことが多いです。たとえば契約時に10億円補償の地震保険を契約しても実際は5000万円から1億円程度しか手元に戻ってこない可能性が高いということです。これでは地震保険に加入するメリットがあまりありません。

地震保険に加入したいけどできなかった
同じ地域に会社があるので地震で一発で企業が飛んでしまうかもしれない
企業自体は儲かっているけど地震が一番の不安

などの方は一度相談いただきたいと考えています。

参考資料
SOMPOリスケアマネジメント株式会社・中小企業の事業継続に関する調査事業報告書:https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/2017/170414saigai.pdf?fbclid=IwAR1JN7uuZfsgCJyk2TVjLpXF-gErMUapVSldkPOs9wwCEgYUeyuEwB11zLk